雷は高い所へ落ちる!

 雷は高い所へ落ちる傾向が強い。平地で立った人と、低姿勢の人が並んでいた場合は、立った人へ落ちるとほぼ断定できる。しかし、ほぼ同じ身長の二人が並んで立つと、どちらの人に落ちるか、二人へ分かれて落ちるかは偶然に決まると考えてよい。避雷針は落雷を誘雷するものであるが、100% 避雷針に落ちるわけではない。雷の放電路は、下向きだけでなく、上向き放電や、水平な放電も発生する。

      

家の中は絶対安全ではない!

 家の中は基本的には安全であり、落雷時には建物内に避難するのが最も安全な退避行動といえる。ただし、電灯線・電話線の回路を介した落雷電流や、テレビアンテナへの落雷によりテレビの損傷、極まれな例として、金属製パイブの水道管へ雷電流が流れ込む危険性が考えられる。落雷による住家の火災はしばしば発生している。特に、雷電流の継続時間が長い冬季雷では、このような危険性が高まる。また、コンピュータのハードディスクなどの電子機器は、普段から雷対策(瞬断など)を講じておく。

      

林や森の中も危険!

 木の下は、木への落雷による側撃雷の危険性が高い。落雷による死亡原因は、開けた平地に立っていた場合が最も多く、第2位が木の下の雨宿りであり、この二つの場合が全落雷死の半数以上を占める。たとえ林や森の中に居たとしても、同様に危険である。
 落雷に対して絶対安全な空間は、ファラデー・ケージ(Faraday cage)といわれる導電性の高い金属製のカゴの中である。ゴルフ場などでは、この条件を満たす避雷東屋の設置が望ましい。

      

高い物体のそばは安全?

 建物や車など周囲に何もない所では、コンクリート製の電柱のそばが安全といえる。物体が電気の伝導体で完全接地(アース)されていれば、そのそばの安全性は高い。但し、完全に接地されていない金属製柱や、フエンスのそばでは安全は保障されない。そのフエンスや金属柱からの側撃を受ける危険性がある。

      

「保護範囲」とは!?

 一般に、高さ4 m 以上20 m までの物体、例えば、電柱などの頂点を45度の角度にみる空間は、「保護範囲」とよばれ、ほぼ安全といえる。ただし、立ち木は4 m でも側撃を受ける危険性があるため、とにかく近寄らないようにする。高さ4〜20 m の電線については、その電線を屋根の棟と見なし、底辺の幅4〜20 m の三角錐の空間内が保護範囲に対応している。完全な保護範囲は、ファラデ―・ケージ内である。

      

車の中は安全?

 車の中は安全空間といえる。キャンプ、登山、海水浴、屋外スポーツなどで周囲に避難場所がみあたらない時には車の中に逃げる。周りに何もない時は車に逃げるのが最善の策であるが、周囲に建物があればそちらを選択する。直撃を受けても中の人は大丈夫だが、相当の衝撃を受け、窓が割れたり一部焼き焦げたりすることもある。また、落雷が集中するような嵐の中では、しばしば竜巻などの突風も発生し、乗用車は横転する危険がある。飛行機や電車の中も雷に対して安全な場所といえる。

      

海、山のレジャーは要注意 !

 落雷に対して最も危険な場所は「広く開けた場所」であるので、海・山のレジャーに際しては、前もって気象情報に十分に注意する。最近はラジオ・テレビ以外にも、携帯電話などで気象情報をチェックして、雷雲の接近を確認することができる。定時的な気象情報に注意し、行動の中止・延期・帰宅を含む予定の変更をためらってはならない。

      

直撃雷は九死に一生?早い蘇生措置を!

 たとえ直撃雷や側撃雷を受けても、早い蘇生措置により一命を取り留める場合がある。また、"ジッパー効果"(例えば上半身に沿う傘の金属軸が体内を流れる雷電流のバイパスとなり体内の雷電流を減らす)により助かる場合もある。但し、ジッパー効果は、常に期待出来る訳ではなく、雷雨中に傘を差す事は絶対に避ける。

      

逃げる場所がない所での基本姿勢は?

 万が一逃げ込む所がない時は、両足を揃えて膝を充分に折って上半身は前かがみになり、両拇指で耳の穴を塞ぎ鼓膜が爆風で破れるのを予防し、残りの指で頭をかかえ下げ、雷雨の通過を待つ。地面に腹ばいになるのは、近くの地面への落雷電流による歩幅電圧・地面と体表面の間の沿面放電による心室細動(心停止)の危険性がある。
 嵐の中でこのような姿勢を取るのは、恐怖を伴い現実的には難しい。周りの構造物に逃げ込む、車の中に入る、山であれば尾根から谷に移動するなどの行動をまず考えるべきである。

      

天気情報が最善の危機回避行動!

 学校行事、公共の野外活動、あるいは屋外イベントに際しては、しかるべき気象情報会社に継時的な情報提供を依頼する、あるいはリアルタイムの雷雲情報を携帯電話で検索するなど情報の収集を行う。雷雨の接近情報を入手したら、速やかに中断して避難させる。雷雨の可能性が予想される場合は、早めに行事を中止する。近年、屋外の落雷事故で責任を問われることもある。
 雷鳴後30分経過しても、次の雷鳴を聞かなくなったら、中断した屋外行事を再開してもよい。その場合にも、各種メディアで気象情報を入手し、周囲に雷雲がないか、接近する雷雲がないかを確認すべきである。

      
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