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会長からのご挨拶

芳原 容英

電気通信大学

 この度、第29期(2025~26年度)の会長を仰せつかりました電気通信大学の芳原容英です。2年間の任期中は、全力で本学会に尽くしますので皆さまのご理解、ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 日本大気電気学会はその前身である大気電気研究会(1968年に発足)にルーツを持ち、日本における大気電気学研究の要として、現在に至っています。当初は、大気電気分野の中でも雷放電現象や、イオン・エアロゾル等のサイエンスが学会における主な研究分野でしたが、時代の変遷とともに次第にその関連研究分野にも裾野を広げ、今や放射能、地震、電磁波、電磁環境、気象など身の回りの自然現象を総合的に扱っており、学際的な様相を一層深めています。特に、昨今頻発している集中豪雨や、巨大台風、地震等の自然災害に関する研究は、それらの科学的知見の獲得のみならず、減災を目指した実応用に関する研究も盛んになりつつあり、まさに本学会の社会貢献が一層期待される時代を迎えています。

 さて、本年4月の春の叙勲にて本学会元会長で、現名誉会員である早川正士電気通信大学名誉教授が、瑞宝中綬章を受賞されました。長い歴史を有する本学会にとっても大変喜ばしいニュースであり、学会の誇りとなる出来事です。本受賞は学会会員、とりわけ若手研究者にとって大きな励みとなるだけでな く、本学会で行われている研究活動が学術界、社会に与えた影響の大きさを確認するものでもあります。本学会では、時代の変化に対応し、歴代会長のご尽力により、時代を捉えた多くの改革が実施されてきました。例えば、財政健全化、会費の値下げ、学会誌等のデジタル化、CCの導入などが挙げられます。第29期の運営委員会の総意として、①若手の参画機会の増加、②学会誌等による研究活動の活性化による大気電気学分野、関連学術界への貢献、③学会活動の社会への還元を行うとともに大気電気関連学会との交流による本学会の永続的な活性化を目指します。

 現在日本の研究環境は科学技術先進国の中でも、とりわけ低成長であり、博士課程進学者の低下、若手研究者のポストの削減など安定的な研究ができる環境とは言い難い状況が続いています。幸いにも本学会は、大学に勤務する会員のご尽力により、研究発表会では、多くの学生による発表と活発な議論がなされており、その発表件数は、例年総発表数の半数にも達する望ましい状況です。しかし、博士後期課程学生、ポストドクター、若手常勤研究者の発表数は、シニア、ベテランの常勤の研究者に比べて少なく、将来の後継者不足という、国内外の多くの学会と同様な問題を抱えています。本学会では、これらの問題を長期的な視野に立って解決していく必要があるとの強い危機感をもっています。このため、第28期鴨川前会長の元では、運営委員に若い研究者が入ることにより、運営面においても若返りと若手の熱意が反映される環境が作られました。

 第29期においても、引き続き多くの若手が運営委員に就任していることから、皆一丸となって本学会の活動やその魅力を国内外に効果的に発信するとともに、将来を担う当該分野の研究者の獲得に向けた大胆な試みにも積極的にチャレンジしていきます。第28期では、学会の研究活動の活性化および会員サービスの向上のため、JAEの掲載料無償化が実施され、2023年4月1日以降に投稿されました論文は掲載料が無償となり現在に至っています。JAEはオープンアクセスであり、国内外の多くの研究者の目に触れる機会が増えているにも関わらず、JAEで発表される論文件数は限定的です。そこで、29期では掲載論文件数の顕著な増加をめざした、既存の枠にとらわれない効果的な取り組みを行っていきます。また、大気電気学の新しい教科書についても、早期の発刊を目指していきます。